日本ほど建物密度が高い国なら、Wifiだけでどこまでも行けるはず・・! (Satellite Image taken from TerraMetrics for educational purposes) |
こんにちは。河本です。
最近ネットの自由を脅かす様々なニュースが話題になってますね。
NSA職員が傍受したヌード写真で遊んでたり、
英国がネット検閲に力入れ始めたり、
ハンガリー政府が「インターネット税」の導入を決めたり。
現行のインターネットは、施政者の息がかかった電気通信事業者のインフラ無しでは繋ぐことすら出来ません。
これはしょうがないことなのでしょうか?
ところでネットワークの種類にWANETというものがあります。
簡単に言うと、短距離の無線ノード同士を接続することで、バケツリレー的にデータを遠くまで運ぶ技術です。
中央の統制者が居ないため、検閲しにくく、インターネット従量課税なんてアホなこともできません。
そこで今回は、もし住宅に置かれたWifi基地局同士を繋いで純度100%の「草の根インターネット」を作ったら、東京からどれぐらい遠くまで通信できるのか、を検証してみたいと思います。
各戸に短距離無線しか無くても、複数の家を中継すれば遠いところまで通信できる |
前提条件
・国内の全ての建物に1台の無線基地局が置かれている
・基地局は通信圏内にある他の基地局と相互接続されている
・通信距離は色々実験する(Wifi:~100m ブーストしたWifi:3200m)
今回は「そもそも接続可能なのか」という観点だけを考えるので、伝送速度やロバスト性などは考えないとする。
建物データの取得
この検証のためには、国内の全ての建物の位置を取得する必要がありますが、そんなデータはどこにも公開されていません。
そこで今回は、Google Mapsから画像認識してクローリングしてきました。
怒られそうなので詳細は省きますが、このように建物の中心点と大きさを認識します:
建物認識の結果 (Satellite Image taken from TerraMetrics for educational purposes) |
下の図は国内の全建物の密度を示してます。東京と大阪が濃いですね。
国内の建物分布 (Satellite Image taken from TerraMetrics for educational purposes) |
Wifiを使う場合の通信範囲
各家に通常のWifi基地局(通信半径100m)しか無い場合に、東京駅からホッピングで通信できる理論的な範囲(=100m以内にある建物同士を繋いで行った時に、東京駅からカバーできる領域)を計算してみました。
ノード間通信距離100mのWANETで東京駅からWifiのホッピングで通信可能な範囲 |
通信領域内の建物は246万戸、全体の5%程度の建物しか含まれません。
東京の半分と埼玉県の一部分しか入っていません。
大阪と通信するなんて、夢のまた夢でした。
よく見ると、荒川と多摩川に塞き止められていることがわかります。
Wifiの通信距離では、川を越えられないんですね。
荒川を越えられなかった。(赤点:東京駅から通信できる建物。対岸には赤点が存在しない。) |
下の図では、東京駅から通信する際に中継する建物の数を表しています。
最大(東吾野あたりまで)で700ホップも必要なことがわかります。
今回は通信の性能の話はしませんが、スループットを出すのも大変そうですね。
ノード間通信に必要なホップ数。都内はだいたい100ホップぐらいで行ける。 |
Wifiをブーストした場合の通信範囲
普通のWifi(IEEE 802.11 a/b/g/n)で通信できる距離は、国内では100mだけですが、
せっかくなのでブースターを使って通信距離を伸ばした場合に、どれぐらい範囲が広がるか実験してみましょう。(日本では違法です)
このブースターは3.2kmまで行けるなどと言っているので、
200m, 500m, 1000m, 2000m, 3200mで実験してみました。
各建物の通信距離が200mの場合
ノード間通信距離200mのWANETで東京駅から建物をホッピングして通信できる範囲 |
急に広がりましたね。一番北は群馬まで届いています。
興味深いのが、荒川と多摩川の越え方です。
通信距離が200mあっても川の本流では越えられていないため、川が細くなる場所まで大回りしてのルートが取られています。
一方、江戸川と相模川はそれでも越えられていない様子です。
各建物の通信距離が500mの場合
ノード間通信距離500mのWANETで東京駅から建物をホッピングして通信できる範囲 |
川は難なく越えられるようになりました。
北はいわきまで届いています。
しかし伊豆半島の田舎っぷりには負けてしまった様子です。
各建物の通信距離が1000mの場合
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一気に通信範囲が全国レベルに広がりました。
大阪ばかりか、九州まで到達できたのは驚きですね。
九州まで行くのに1200ホップ程度で済んでいることも予想外でした。
一方、北のいわきはどうしても越えられていないようです。
また、伊豆付近の接続エリアが疎なのが気になりますね。
このへんを空爆されたら西と東の通信が遮断されそうです。
各建物の通信距離が2000mの場合
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さっきから50万戸ぐらいしか増えてません。
鳥取まで開通したぐらいの変化でしょうか。
各建物の通信距離が3200mの場合
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2000mとほとんど違いがわかりません。長野県の山間部にもネットが開通したぐらいです。
九州まで350ホップで通信できるようになったのは嬉しいですが、相変わらずいわきが越えられていません。。。
まとめ
・一般的なWifiをホッピングするだけで23区内は通信できる(かも)。その外には行けない。
・1000mぐらい通信距離があれば全国レベルのネットワークが貼れる
→全部の家に1000mの基地局を置く必要はないかもしれない。例えば川の手前とかに置くだけで、残りは通常のWifiで十分かもしれない。(未検証)
・完全に自由が守られた国では、こんなネットワークは無駄かもしれません。でも広域災害が起きたり、日本のインターネットへの締め付けが強くなってきたときに「市民がいかにして自らを守るか」を市民レベルで常に考えていくことに価値があると思います。
・例えば独裁国家にこっそり無線基地局をばらまいて、検閲不可能なネットワークを無理やり張っちゃったりしたら面白いよね。
・地図とか衛星写真を画像認識すると色々解析できて面白い。
・いわきの闇は深い。
おしまい。
(Satellite Image taken from TerraMetrics for educational purposes) |
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